オフィスデザインのお洒落と意識高い系の違いについて考えてみた

働いているスタッフも、スタイリッシュで中には意識高い系ではないかと思えてしまいます。実際、GAFAが試みているオフィスデザインを真似てみると、これまでナチュラルメイクだった女性スタッフがばっちりメイクの目力アップになったり、チェックシャツ一辺倒だったエンジニアがブランドシャツを身につけ始めたり、クリエイターがメディアの最先端を走っているような出で立ちになったりすることがあるようです。
オシャレデザインのオフィスは、やっぱり憧れます。しかし、意識高い系に傾倒してしまうと、どこか痛いオフィスデザインになりがちです。今回は、勘違いオフィスデザインに陥らないための、オシャレと意識高い系のデザインの違いを検証してみましょう。

目次

1.「意識高い系」の定義とは?

「意識高い系」は、どちらかというと揶揄した言葉です。つまり、本当に「意識が高い人」ではなく、「意識が高い人を真似ている」「自分を意識が高い人だと思っている」人のことをいいます。

「意識高い系」という言葉が使われるようになったきっかけは、2000年前後の学生の就職活動です。実際は大してすごくもないのに自分をすごい人に見せようと小難しいビジネス用語を積極的に使ったり、やたら横文字を使ったり、それは本当ですか?というような変わった趣味やおしゃれな習い事、ボランティア活動をドヤ顔で語ったり、企業に落ち続けていても、「起業するだけの力があるのだけど社会勉強のための就職活動だから問題ない」と、あたかも自分から断っているような雰囲気を出している言動にたいして名前をつけたという経緯があります。

また、学生たちだけではなく、「スタバでMacbook Airを使ってドヤ顔で仕事している」「ランチは健康意識高い野菜たっぷりおしゃれ弁当や外食を死守する」「皇居ランをアピール」など、イタいビジネスパーソンたちを揶揄するためにも使われました。

「意識高い系」は実が伴っていません。意識が高い人やすごい人を真似るだけで満足していますし、「すごい人」「意識が高い人」に見られたいと思うあまり、実質が伴っていないと思っていないと感じていません。周りだけが「真似しているだけ」とわかっているので、痛いと思われてしまうのです。

・意識高い系の9つの特徴

意識高い系には特徴があります。全てを備えているわけではありませんが、ひとつだけ当てはまっていても意識高い系と言われてしまいますし、複数が当てはまる場合は「そういうキャラクター」とみなされている場合もあります。

・必要性がないにも関わらず、専門用語やカタカナ語を使いたがる

専門用語やカタカナ用語を多用し、いかにも業界に精通し、その筋では専門であるかのようにみせ、デキるビジネスパーソンであることをアピールします。例えば、予定をアジェンダ、革新をイノベーション、会議をカンファレンス、優先順位をプライオリティ、合意をコンセンサス、証拠をエビデンスという具合です。
これを会話に盛り込むと、
「次でこのプロジェクトをフィックスするから、ミーティングをアレンジしといて。アジェンダ先にシェアしといて」
「例のプロジェクト、彼のタスクが多すぎてボトルネックになってる。サポートの人員アサインしてくれないかな」
という、「日本語で言ってよ…」と突っ込みたくなるような事案になります。

・問題提起・社会貢献をアピールし、これらをしない人間を下に見たり、啓蒙しようとする

問題提起や社会貢献は、人が充実した人生を歩んでいくために、また成長していくために必要なことですが、それを積極的にマウンティングや自己アピールの道具にします。さらに、啓蒙しようとするので周りの人はたまったものではありません。

・努力や忙しさの過度なアピール努力
SNSでわざわざ忙しさ自慢をします。「今日も徹夜かな…」「あー、ここんとこ3時間しか寝てない」などの寝てない自慢が有名です。
そんなに忙しいなら「今すぐ寝ろよ!」と突っ込みたいところですが、突っ込むことすら面倒になってしまいます。

・自分の実績アピール
過去の自分の実績や関わったプロジェクトを、数倍または数百倍大きく盛ってアピールしてきます。
その業界に詳しくない人には有効な行為ですが、知っている人や当時の仲間に知られて突っ込まれると急に元気をなくしてしまいます。

・自己啓発にのめりこむ
本当に意識が高い人は、自己啓発で生活や価値観を変えようと努力をしますし、正しく自己成長につなげることができます。
しかし、意識高い系の人は、中途半端にかじっただけで、いかにも自分が成長したという態度になり、しかも、周りの人に啓蒙しようとします。また、その自己啓発セミナーに出席しない、自己啓発本に影響されない人を見下すことがあります。

・ものすごい仕事してる感を演出
Facebookに多いのがこのパターン。グローバルに活躍している、華やかな人脈があることをやたら自慢したりマウンティングしたがります。本当にすごい人ならば、他のことですごいことがわかるのですが、意識高い系の仕事している感はどこかワザとらしく、とってつけた感じでわかってしまうようです。しかし、本人はマウンティングに夢中なので、誰も相手にしていないことに気づいていません。

・合理的思考でアナログを馬鹿にする
とにかく、お金に繋がらない、または自分の得にならないことには興味がなく、教養にも自分のマウンティングや時給に関係がないことには見向きもしません。
また、ITが最先端で合理的と信じているので、紙や手書き、手作りなどアナログのものを見下します。

・人脈づくりにやたら熱心
人脈を作るためなら高いお金を払ってでも異業種交流会に行って、とにかく名刺を集めたがります。名刺の枚数を稼ぐことが目的なので、理念がありません。したがって、有益な人脈を作ることができないままなのですが、本人は気づいていません。SNSのフォロワー数=自身の影響力と考えており、SNSのフォロワー数を自慢し、時にはそれを戦闘力のように自慢します。
また、とにかく大勢の人と知り合い、自らの人脈を拡大をしようとするため、写真に写り込んだ人も「友達」と吹聴します。そのため、「人脈おばけ」と揶揄される意識高い系も多いようです。

意識高い系がなんとなく揶揄されてしまうのはなぜでしょう。
それは上記の特徴がある他、日本には「脳ある鷹は爪を隠す」ということわざのとおりに、本当にすごいひとはそのことについて自慢しないことがスマートであるという意識があるからなのかもしれません。
また、本当に意識が高く実がある人から突っ込まれた場合、意識高い系の人には答えに窮してしまうでしょう。実際にそのような現場に遭遇することも多いようで、そんなときは意識高い系の方が逆ギレすることもあるようです。その姿は、見ている人にとって滑稽に映ることでしょう。

また、本当に意識が高い人は、あえてカタカナを使わなくてもわかりやすく、その場の雰囲気に合わせて言葉を選んで的確に説明することができます。意識高い系の人がマウンティングのためにやたらカタカナを並べれば並べるほど、可笑しさが増加してしまうのです。
「意識が高い人」は、自分を高めるために相当な努力をし、有言実行のために行動し勉強しているので、あえてデキるフリをしなくてもかまいません。仕事は常にレベルの高い仕上がりを意識し、健康管理も自分が楽しく人生を送るために必要であるから意識しているものです。

しかし、「意識高い系」と言われていた人も、その後の努力や開眼で本当に意識高い人になるかもしれません。高い目標を定めることは悪いことではありません。行動と勉強が必要なのです。

2.お洒落と意識高い系。オフィスデザインの違いとは?

意識高い系の定義はわかりました。では、意識高い系と言われてしまうのはどんなオフィスデザインなのでしょう。

それはずばり、「どっかでみたことがあるような流行りのデザインを詰め込んだだけ」のデザインです。Googleのフリースペースにキャンプ場ができたといえばそのままパクり、Microsoftがスタンディングオフィスを導入したとなると業種を考えず全社スタンディングデスクにしてしまい腰痛スタッフを急増させてしまう、フリーアドレス制が流行っているといえば早速自由席にして、仕事場難民を増加させてしまうなどです。

本当にお洒落なデザインのオフィスは、理念と目的があります。ブランドや業種を考えて、スタッフが本当に心地よく快適に仕事ができるように工夫されています。

デザインは、カッコ良いことばかりが良いデザインではありません。そこに快適性があり、問題解決がなければ、本当のお洒落とは言えないでしょう。

3.こんな「意識高い系」のオフィスデザインは避けるべき!

・見境なくフリーアドレスを導入してしまった

フリーアドレス制とは、オープンスペースでどこに座っても仕事ができるような環境にすることを言います。自分の机という概念がなく、どこに座って仕事をしてもOKです。ノートパソコンを持って、好きなところで作業をすることができます。

フリーアドレス制には、向いている業種と向いていない業種があります。
向いている業種は、

営業職や派遣の多いSE職がメインの企業

・ 在席率が40%未満
・ オフィス外でも仕事ができる十分な通信・共有環境が整っている
・ フレックスタイムや直行直帰できるような、働き方に自由がある
・ 20~30歳が多い
・ 社員の働き方改善への意識が高い

また、在宅勤務が多い企業もフリーアドレス制は便利です。必ずしもスタッフの数だけデスクを用意する必要がない事務所や企業に向いていると言えるでしょう。

反対に、フリーアドレス導入に向いていない企業は以下です。

・ 総務職や電話対応の多い事務職、デスクトップが必要なクリエイターがメインの企業
・ 在席率50%以上
・ オフィス外には持ち出せない機密性の高いデータ、容量の大きいデータを扱っている
・ 営業であっても夕方にはほとんどが帰社するような、社員のタイムスケジュールが同じ企業、またオフィスの在席時間で仕事を管理している企業
・ 0歳以上が多い

毎日社員が全員揃うようなオフィスでは、全員分の座席が必要です。フリーアドレス制は意味をなさないでしょう。

しかし、意識高い系の意識が高じて、「GoogleなどのGAFAがフリーアドレス制だから、我が社もフリーアドレス制にすべし!」と導入してしまうと、返って不都合が出てきてしまいます。

日本人は、場所や「自分の物」に対する縄張り意識が強いため、フリーアドレスのような自由席タイプだと、自分の居場所の喪失を感じる人も出てきます。
特に40歳以上になると、ずっと自分のデスクがあることが当たり前だった世代です。その仕組みを急に変えることは、大きなストレスに感じられる方もいます。社員の平均年齢が高い企業では注意が必要です。

・スタンディングデスクにすると生産性が上がると信じて導入

スタンディングデスクは、立ったまま仕事ができる机です。立って仕事をすることで、健康増進、会議が短くなる、頭の回転が速くなるなどの理由から、IT企業をはじめとして多くの企業が導入するようになりました。
しかし、スタンディングデスク導入にも向いている業種とそうでない業種があります。また、スタンディングだけだと、やはり疲れが出てしまうようです。

「GAFAが成長し続けるのは、スタンディングデスクだ」「働き方改革でスタッフの健康管理が必要だからスタンディングにしよう!」と、ただやみくもに導入すると、業種によっては腰痛や疲労のスタッフが出てしまい、返って生産性が悪くなってしまいます。

スタンディングデスクを導入するのなら、スタッフの働き方や業種、選択制にする、スタンディングと座るのと変えられるようにするのが良いでしょう。
そもそも、なぜスタンディングデスクにしたいのかの目的が明確になっていなければ、スタッフも目的を持つことができません。

お洒落だから、流行っているからではなく、実際に導入してどうなったのかわかるように、徐々に導入するのがよいでしょう。

・おしゃれなフリースペースを作ったけど、どう使って良いのかわからず人も集まらない。または、人が集まりすぎて管理ができない

斬新なフリースペースも人気のおしゃれデザインです。最近では、フリースペースが子供部屋、またはキャンプ場、ハワイテイスト、高級カフェ風、ジャングル風、子ども公園風など、さまざまなスリースペースが話題になっています。

ただ流行っているからと導入してしまうと、使い方がわからず誰も使わないということになりかねません。また、おしゃれだからと高級カフェにして見たら、照明が暗すぎて仕事ができない、会議にならないということもあります。

「オシャレだ」というだけでオフィスを“猿真似”することは、それこそ意識高い系のすることです。それぞれの企業が持つ個性や業績が上がるワークスタイルのあり方を見失ってしまいます。

実際、そんな“猿真似オフィス”で働くスタッフからは、

・ 新しくなったのは良いけれど働きにくい
・ 女性のメイクが濃くなっただけ
・ 使い勝手が悪くトンデモすぎるので、古いこれまでどおりの会議室に予約が殺到して会議室の空きがない
・ みんな仕事が忙しいので、カフェスペースの管理・運営にまで手が回るはずもなく、結局放置されている
・ 奇抜なオブジェは掃除しにくく、いつもホコリがたまっている
・ フリーアドレスのおかげで、働く人と働かない人の差が開く一方

など、見た目やシステムだけを追求した結果、仕事の効率が下がっているというケースもあります。

オフィスデザインまで意識高い系にしてしまうと、意識高い系のスタッフだけ満足し、本当に意識が高く仕事をしたい人にとって良い環境で無くなってしまう可能性があります。

実際、社食がお洒落なカフェになったことで、ひとりで静かにランチをすることができなくなった、フリーアドレス制になって机に書類を置いておくことができなくなり仕事がやりづらくなったなどの理由で、別の会社に転職したという例もあるようです。

4.オフィスデザインに必要なのは、「お洒落」+「居心地の良さ」

オフィスデザインにおいて必要なことは、お洒落なだけではありません。居心地の良さや生産性がなければ、それはただ単に意識高い系オフィスになってしまいます。
意識高い系オフィスで失敗しないためには、オフィスのコンセプトを明確にすることが必要です。

コンセプトはオフィスデザイン、ひいては会社創りの基盤となるものです。その企業の理念やビジョン、ブランドやターゲット、社会に与える印象、貢献など、企業全体の姿勢を見直し、洗い出す必要があります。

例えば、女性に活躍してほしいという思いのファッションブランドのオフィスであれば、その思いを表現するためのオフィスをデザインします。子どもと家族のためのハッピーな暮らしを届けたいメーカーのオフィスであれば、幸せな家族像をイメージできるハッピーな空間があるとアイディアがわきやすいでしょう。ビジネスを加速させるコンサルティング会社のオフィスであれば、素早く正確な判断と社会を読み解く洞察力が必要です。冷静になれる色合い、ブランドを体感できる空間を演出するデザインを検討していきます。

また、来訪者、ターゲットからどう見られたいのかも大切な視点です。

「元気で明るく」「伝統性を重んじる」「信頼とスピード」「エグゼクティブな高級感」など、これらのイエージはブランドと紐づけられます。ブランドイメージとマッチしていることが重要です。

こうしてコンセプトに沿ってデザインすることにより、「来訪者におもてなしの心を感じてもらいたい」「企業としての安心感を表現したい」「社員が誇りに思えるようなハイブランドのイメージを持たせたい」というように、希望がはっきりしてきます。

結果として「ハイクラスホテルのようなデザイン」「カフェ風」「モノトーンを基調に」など、方向性が出来上がります。コンセプトを明確にすることによって、自ずとデザインが決まってくるのです。

また、オフィスの移転やリフォームでデザインを一新したいという時にも、やはりコンセプトの洗い出しが必要です。移転やリフォーム時には、改善したい点、とりいれたい点など目に見える部分を変えたいと思ってしまいますが、コンセプトを洗い出すことで、解決しなければならない課題が明確化し、ブランドやスタッフのベクトルなどにもより良い変革をもたらすことができます。

例えば、「会議室が足りない」「増員で席数が足りない」等のオフィス機能の課題は目に見えているものですが、ここに、イメージを「コミュニケーションが活発なクリエイティビティな会社」にして、「お客様の幸せを形にするクリエイティビティ」というコンセプトを打ち出すことで、「縦割コミュニケーションしか発生していない」「理念が浸透していない」等の組織としての課題が見えてきます。

会社としてどのような課題を抱えているのかを把握し、今後どのような事業戦略を描き、どのような組織になっていきたいのか。どのようなブランドとなりたいのか、誰に届いて欲しいのか等、それらを明確にするところから、デザインコンセプトは始まるのです。

しかし、コンセプトに沿っているからといって、ただおしゃれに、機能的にすれば良いわけではありません。オフォスはスタッフが1日過ごす場所です。オフィス環境のコンセプトを決めていくことが重要です。

オフィス環境のコンセプトとして、社員にとっては居心地の良いオフィス、会社にとっては生産性の高いオフィスにすることはどの企業にも共通する課題です。 さらに何が必要なのかを考えてみましょう。
その目的とコンセプトを組み合わせてデザインを考えます。

例えば、社員のモチベーションを高め、個人の能力を最大限発揮させ、仕事の効率を上げることが目的であるならば、クリエイティビティが発揮できるデザインや配置が必要です。コミュニケーションを活発にしつつ、作業に没頭できるスペースが欲しい場合は、デスクの配置やパーテーションなどのオフィス家具の選択や配置の他に、来客時のプライバシーとオープンスペースなどのバランスを考える必要があります。配色も、コミュニケーションとプライベートスペースでは違ってくるでしょう。

また、最近では就職先の選択基準として、おしゃれなオフィスや環境があります。おしゃれなオフィスはモチベーションもあがり、職場環境も良い印象があるようです。また、おしゃれなオフィスは資金的にも安心であり、取引先からの視点を考慮しているなど、信頼性にも関係しています。

人材確保のために、オフィスを魅力ある快適な空間にしてしまおうという考え方もあり、エントランスをブランディングスペースにしているオフィスもあります。作業空間もおしゃれでコンセプトがみえるオフィスデザインであれば、ここで働きたいと思わせる効果があります。

コンセプトを明確にすることは、統一性のあるデザインとなり、オフィスでの問題解決にもつながります。「どのような企業になりたいのか。何に社会貢献したいのか」のように、企業の理念やビジョンをもう一度考えることが大切です。
そうすることで、スタッフの真の希望に沿ったデザインとなり、快適な空間となります。快適でおしゃれなデザインに成功することで、自ずと生産性の高い、「意識が高い」スタッフがあつまるおふぃすとなるでしょう。

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