コンパクトシティ時代の新しいオフィスデザイン

1. ICTの進化がオフィスの形を劇的に変えた

1960年代の高度成長期のオフィスは事務処理が中心であり、オフィスレイアウトも効率性を重視したヒエラルキー組織の組織図を再現した対向式や教室型が主流でした。その後、島型対向レイアウトやパーテーション式オフィスなどのバリエーションが増えましたが、オフィスを劇的に変えたのは1990年代から2000年代にかけてのICTの進化でした。
デスクに縛られる原因となっていた電話が携帯電話となり、メールやノートパソコンが登場したことで「いつでもどこでも働ける環境」ができたのです。情報共有の効率化とコミュニケーション手段の多様化で、オフィスが劇的かつ個性的に変わりうる土台が出来ました。
さらに近年、スマートフォンやタブレット型端末とクラウドサービスや安価な高速通信サービスの登場で、社外からも情報共有が可能になっています。情報セキュリティの課題は残るものの、技術的にはいつでもどこでも仕事ができる環境が整ったと言えます。

2. 働き方の多様化とワークプレイスの変化

日本のビジネス社会でも、これまでのそしきりょくから「個の力」が問われるようになってきています。起業するもの、フリーランスとして働くもの、さらにはプロボノにも注目が集まっています。SNSなどの人をつなぐツールや、クラウドソーシングなどのビジネスプラットフォームがそうした活動を支えています。
また、街やビルの中に個と個をつなぐ場ができつつあります。シェアオフィスを始め、コワーキングスペースなどがその典型例です。当初はスターバックスに代表されるカフェであり、その後六本木ヒルズの「アカデミーヒルズライブラリー」などの会員制学習スペースや丸の内の「EGG JAPAN」などの新しいビジネス創造プラットホームの登場が挙げられます。今では、原宿の「ターミナル」や銀座の「リーグ」、青山の「ビジネスエアポート」など、町の中にさまざまなワーキングスペースができています。こうした動きは時代の要請であり、近い将来さらに拡大していることでしょう。
コワーキングスペースの価値や魅力は、スペース、会議室、電源、通信環境、プリンタなどのハードをシェアするだけではありません。利用者は交流や協働の中から異なる分野の情報や経験、価値観を知り、ビジネスのシーズを発見したり、互いにスキルを高め合うことに醍醐味や刺激、新たな価値を見出しています。

3. 複合機能のコンパクトシティが提供するもの

既存の街にコワーキングスペースをバラバラに埋め込んでいくだけでなく、開発当初からこうした仕掛けを積極的に組み込んでいく動きも出てきました。人と人がつながる場・時間・機会・仕組みを意図的に組み込み、それがうまく機能するように管理・運営も整える。クリエイティビティを重んじるテナントにとって、こうしたオフィスビルや街は大きな付加価値になるでしょう。
もともとナレッジワーカーやクリエイターは職住遊の境界が曖昧であるし、ひらめきやアイデアは往々にして思いがけない瞬間に思いがけないところで生まれるものです。レストランでの会食中に、公園の緑の中でくつろいでいる時に、あるいは美術館でアートを眺めている瞬間に……。
昔はその都度アイデアを手帳にメモしましたが、今ではいつどこにいてもオフィスのサーバーとつながるICTがサポートしてくれます。
多くの都市機能を複合させたコンパクトシティは、そうしたワークスタイルを実現する上で極めて都合がいいのです。人と会う、遊ぶ、くつろぐ、刺激を受ける、働く、暮らすといった機能が1箇所に集まれば、24時間を効率的かつ自由にデザインすることができます。異業種や異文化との交流機会も増え、情報、経験、価値を共有し、協働しやすいです。これは「オープンイノベーション」にとって重要な要素となるはずです。

4. 近未来、都心部は高次元のコンパクトシティに

都市構造について振り返ってみると、明治以降、首都圏は拡大し続けてきました。用途分化型の都市構造が良いとされ、都心にオフィスが集積し、住宅街は郊外に拡大しました。その結果、オフィスと住まいが離れ、多くの人々が長い通勤時間を余儀なくされています。
しかし近年、都市再生、都心回帰の動きが顕著になりつつあります。六本木ヒルズや東京ミッドタウン、大手町・丸の内・有楽町エリア、汐留など都市中心部を高度かつ複合的に活用する大規模開発が相次ぎ、都心に隣接する湾岸エリアでは超高層マンションが林立しています。都市機能を複合させ大規模開発に寄って都心の緑や住宅も増え、ビジネスオンリーだった都心が賑と活気に満ちた憩いの場、居住の場としてもよみがえりつつあります。
2013年時点の東京湾岸エリアの人口は11.4万人ですが、公表されている開発計画が竣工した場合の人口は18.5万人(+7.1万人)に増加すると推計されます。2020年の東京オリンピックの開催が決まったことで、湾岸エリアの開発はさらに加速するでしょう。
未開発地にも同様の人口密度の住宅開発が進むと仮定すると、約20万人(+8.6万人)の人口を抱えることになります。ちなみに東京郊外の小平市や三鷹市の人口は18~19万人、立川市が18万人弱です。この規模の市を超える人口が東京湾岸エリアに集積することになります。
また現在整備が進んでいる環状2号線が開通すれば、羽田空港から都心へのアクセスは劇的に改善されます。併せて地下鉄や空港、モノレールなどの交通機関の24時間運行も検討されるでしょう。
近い将来、多くの人々が都心に居住して都心部はより一層コンパクトシティ化し、東京都新全体が24時間稼働できるワークプレイスになっていくものと思われます。

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