令和時代に考える。オフィスに喫煙ブースは必要か否か

目次

1.成人喫煙率(JT全国喫煙者率調査)について


出典:https://www.thespruce.com

ひとことにタバコと言っても、昔ながらの葉巻や紙タバコ以外に、今では電子・加熱式などといったデバイスも登場しています。みなさんの周囲では、喫煙習慣のある人はどれくらいいらっしゃいますか?
一昔前に比べると、いわゆる「愛煙家」と呼べるような人が減ったように感じられている方が多いかもしれません。

現在の成人喫煙率はいかほどなのか、JT全国喫煙者率調査を見てみましょう。

※厚生労働省のTABACCO or HEALTH 最新たばこ情報HP
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html

2018年(平成30年)の結果ではありますが、調査が開始された昭和40年から比べると、全体的に右肩下がりとなっています。男女差で見てみると、とりわけ男性の喫煙率は著しく減少しています。

女性に関しては、一時的に20~40代において増えたように見える平成初期が、ちょうど女性の社会進出と比例しているのでしょう。男性ほどグラフが極端でないのは、もともとの喫煙者数が少ないことによるものと思われますが、やはり平成末期には下がり気味に。

やはり私たちが日々感じているように、喫煙者数が減っているのは事実なようです。

このように成人喫煙率が減少したのは、はじめは個人の健康志向によるものだったのが、やがては他者の受動喫煙をも配慮する世の中になったため。加えてタバコの値上がりも、禁煙ブームに拍車をかけたのは間違いないでしょう。

2.2020年4月に全面施行された「改正健康増進法」とは?


出典:https://readyproperty.co.uk

減少傾向にある日本の成人喫煙率。ですが、世界規模で比較すると、特に男性はまだまだ多いといえる水準にあるようです。そして2020年4月には「改正健康増進法」といった、喫煙者の方々にとっては少々悩ましいであろう新ルールが設けられました。

受動喫煙による被害を考慮したこの法律は、屋内原則禁煙化、とりわけ飲食店における喫煙場所の制限が強化されたもの。喫煙席・禁煙席の区分けは今までもありましたが、今後はより明確な分煙をすることとなったのです。

従来の“座席が離れているだけで間取りは一間”といった別れ方ではNGで、独立した喫煙専用室が必須に。なお店舗側は、店内でタバコが吸えるか否かを、入口に標識で提示しなければなりません。

これを確認することで、喫煙者が喫煙場所を探せるだけでなく、非喫煙者が自主的にタバコを避けたお店選びができるのも、この法改正における目的の1つです。

3.喫煙室を設置する上で適切な基準とは?


出典:https://www.qleanair.com/

今回の法改正で、顕著な変化が見られたのは飲食店が主ですが、オフィスにおける喫煙環境も例外ではありません。事務所・工場・学校・病院・役所など、ほぼすべての労働環境下でこのルールが適応されます。

しかし、屋内禁煙化はあくまで“原則”。
適切な喫煙スペースを設けた場合に限り、店内でもタバコを吸うことが可能です。では、いったいどのような基準を満たせば、適切な喫煙スペースといえるのでしょうか?専用喫煙室の技術的基準としては、下記のように定められています。

・禁煙エリアから喫煙室内に向けて毎秒0.2m以上の空気の流れをつくり、タバコの煙が禁煙エリアに漏れないようにすること・喫煙室は壁や天井などによって分けられ、タバコの煙が禁煙エリアに漏れないようにすること

・タバコの煙は屋外に排気されていること

従業員や来訪客からのニーズにより、やむを得ず屋内に喫煙所が必要であれば、いまいちど現在の間取りや環境を見直しましょう。

4.屋内喫煙室/屋外喫煙所とは?


出典:https://www.qleanair.com/

オフィスにふさわしい喫煙所は、いくつかのパターンが存在します。まずは屋内か屋外かに分かれますが、建物内にあっても開口面が外に面していれば屋外喫煙所とみなされるので、「どちらに出入口が向いているか?」と覚えておくとわかりやすいかもしれません。

屋内/屋外いずれも、工事が必要なタイプか簡易組み立て式の2通りから。喫煙室の商品価格としては、スペックに応じて数十万~200万円台であるものの、工事費用の有無やデザインの選択肢などが変わってきます。
それぞれの比較はおおむね以下の通りです。

●屋内
・工事が必要なタイプ
デザインの自由度が高い
商品型であっても寸法や細かく決められ、色も選べる
工事費が発生する

・簡易組み立て式
規格寸法化されており、指定業者でなくとも組み立て可能
サイズは選べるが、パーツデザインの変更は難しい

●屋外
・工事が必要なタイプ
デザインの自由度が高い
商品型であっても寸法や細かく決められ、色も選べる
基礎工事が必要なケースが多い
出入口を工事すれば建物内にあってもよい

・簡易組み立て式
基礎工事が不要
規格寸法化されており、指定業者でなくとも組み立て可能
サイズは選べるが、パーツデザインの変更は難しい

それぞれにメリット・デメリットがありますが、完璧な分煙化をするにあたって今後も必要不可欠な設備。じゅうぶんに検討し、利用人数やオフィスデザインにふさわしい喫煙スペースをチョイスしたいものです。

5.非喫煙者にも優しいオフィスとは?


出典:https://www.rte.ie/

喫煙スペースの設置は容認され、この度の法改正では、愛煙家の立場もなんとか守られることとなりました。ですが、改正健康増進法の最たる目的は、非喫煙者の「望まない受動喫煙」を防止すること。

喫煙ブースの技術的基準を抑えたうえで、プラスアルファの配慮を忘れてはなりません。この基準では「タバコの煙が禁煙エリアに漏れない」点を重視し、適切な換気・排煙を促しているものの、やはり喫煙ブースへの出入りの際は、どうしても煙やニオイが漏れてしまいます。同様に、排気システムで逃がした空気も、屋外の換気扇付近では「タバコ臭」となって漂ってしまう可能性があり得ます。

それらは直接的な副流煙ではないにせよ、不快に感じる人も多いもの。ですが、日々タバコを吸っている人にとっては、こうした微弱なニオイにはなかなか気付きにくいでしょう。
喫煙ブース設置の際は、喫煙者だけでなく非喫煙者の意見も取り入れるのがベター。

従来の喫煙シーンで気になる点や、具体的にどの方向にニオイが流れているかなど、入念にヒアリングすることをオススメします。なお、簡易組み立て式の喫煙ブースであれば、貸出サービスをおこなっているメーカーもあります。

本格的に導入する前に、どの程度オフィスに煙の影響があるか知りたいときは、レンタル製品でテスト期間を設けてみるのもよいでしょう。

6.喫煙ブースを含め、オフィスデザインのプロに任せるべきか


出典:https://www.qleanair.com/

商品として規格化されているものが圧倒数を占める喫煙ブース。

メーカーにもよりますが、大体がカラーや材質は、数パターンのなかからしか選べないのがネックと感じているかたも多いはず。

「今のオフィスデザインによりマッチした喫煙ブースがほしい」
「コストの関係上製品化されたものを導入するが、多少のアレンジはしたい」

「いかにもあとから取って付けたような喫煙ブースは嫌だ」など…。

オフィスデザイナーに相談してみるのがオススメです。また「そもそも現状の間取りでどこに設置すればいいかわからない」といった、スペースや動線に関するお困りごともお任せください。
社会の分煙意識がよりいっそう高まった令和時代だからこそ、みなが心地よく働けるオフィスづくりを考えてみてはいかがでしょうか?

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